それぞれの 巣立ちの時を 迎えけり・・・
- 木の花幼稚園
- 3月25日
- 読了時間: 5分
ようやく春めいた陽気の中、庭の雪もすっかり消え、雪つり、雪囲いを植木屋さんに外してもらい、同時にツリーハウスのあったどんぐりの木など庭の樹木のいくつか剪定も行ってもらいました。庭もすっきり気分も一新。梅のつぼみもほころび、新たな春の到来を感じさせます。

そんな庭の裏手には倉庫があり、先週には演台や長椅子など卒園式に使う恒例の道具類を職員で運び出しました。庭の物置には、餅つき用の道具やタープ類、昔のコークスストーブ、昔の木製滑り台など様々な備品の収納の他、木材や各種廃材、工具類なども仕舞い込むあゆどんの秘密のスペースになっております(笑)。
そこに行き来するときに、時折「工事現場」とかで「とうせんぼ」する面々が、今年の卒園生になるまつくりさんたちの若かりし頃(笑)。想えば彼らの年少時代からではなかったかと思い返しています。

△コーンの穴にホースを繋げてていたり、あるいは工事用の棒を△コーンにかけていたり、時には一輪車を立てて並べて工事用の仮囲いもどき、時には一輪車をベット替わりにまったりとおしゃべりなど…まあ色々です(笑)。元々、この裏手の物置周辺は白砂集めなど子どもたちが遊びで使う素材集め、作り途中のモノの隠し場所など、伝統的に子どもから子どもへと伝承された木の花あるあるの「コーナー」の一角です。とはいえ今のまつくりさんほど足繁くこのエリア周辺を占拠して遊んでいた子どもたちは記憶にありません。

大人の目をかすめて、モノの組み合わせ方をあれこれ工夫したり、工事車両よろしくここから他の荷車等を出動させてまた戻ってくる…多様な使い方を得意としていた子ども達。用があって物置に行くと「工事中です!」と「とうせんぼ」されますが、「こっちも工事なんだけど…」と言うと、「同業者」のよしみか物置に通してくれます(笑)。時折、その物置の中を覗きに来て、こんなモノもあるのか…と目を光らせながらも(笑)、自分たちの「工事現場」に没頭するのがこの子たちらしいなあ、とその一途さを感じておりました。そうしたまつくりさんの中に時にはさくらあんずさんも混ざって、ここでの遊び方をしっかり伝授している様も伺えます。

年中後半以降、新たな友だちが増えていくにつれて、そのエリアから庭の表舞台に出てきたように感じます。大型スコップを持ち出して穴掘り、川づくりを続け、落とし穴を作ったり、またそうして出来た水たまりに泥をスコップで投げ入れてその跳ね具合をゲームにしたり、あるいは自然物やモノを投げ入れてはその波紋や流れてゆく様子を楽しんだり、はたまた砦のところで大雪の中からヤモリを見つけ、その餌となる虫を掘り起こそうと雪を堀りまくって飼おうとしたり、庭の多様な空間から多彩なモノを絡めて、自分たちの遊びの世界を創出。その続きや「残骸」など多くを異学年の子らにも「おすそ分け」してくれて、遊びが広がっていきました。

ホールに転じればスケーターに腹ばいに乗ってコマのように回したかと思えば、スケーターを繋げて時計の針の如く数人で回転してみせたり、そうしたスケーターの多様な遊び方をさらに他の学年の子らがモノを加えたり、廃材の長い筒を立ててそこにケンパープレートを加えて未来都市のような巨大建造物を作っている傍らで、見様見真似で追加を加える下の学年の子らがいたり、モノを組み替えて遊び込む姿に下の学年の子らを惹きつけてきたまつくりさんです。

それぞれのこだわりどころで時には人間関係でもめることもありましたが、それぞれの持つ発想力を徐々に理解し合い、リスペクトする姿も見えてきた後半は、行事での取り組みでモノと対話し、ひとと対話していく経験値を、試行錯誤でブラッシュアップいく姿勢には目を瞠るものがありました。運動会での全員でする「龍」の舞い、木の花祭りでの「龍神神社」を中心にした新たなお店の展開、クリスマス会での多彩なモノをBGMとして物語に織り込んでの「朗読音楽」、発表会での光と影を取り込んだ影絵や「浄瑠璃」のよう
な人形劇…。

日常の遊びから行事の取り組みを通じて一人一人の持ち味を存分に発揮し、共に創っていく醍醐味を味わい、仲間同士で協同することでもっと面白い、もっとすごくなる、そんな憧れを下の学年の子らに抱かせ、園を担う存在感を発揮してくれたまつくりさん。自然や廃材を含めた多彩な身近なモノを様々に活用し、身の回りの大人も気づきにくい空間まで使い、一人一人のカラーを織り交ぜ、失敗や衝突もいっぱい経験したからこそ、それを含めた体験を力に変え、個性豊かな仲間同士の繋がりの中で、共に創り上げる躍動感や充実感を存分に味わってきたように思えます。

そんなまつくりさんは木の花が幼保連携型認定子ども園となった1年目の年長児。初めて0歳児を園で受け入れた歴史的な園生活での1期生の卒園となります。ぐみ棟の赤ちゃんとも、そして2歳児(どんぐりちゃん)を本園に移しての未満児である2歳児とも優しく付き合ってくれた子ども達でした。私たちにとっても試行錯誤の手探りでの0歳児保育、2歳児を含めた本園生活に少し自信を与えてくれたのは、この子たちのお陰です。0歳から5歳までの子どもたちが共に育つ園の年長児として、多様な人への関係づくりを自然にさりげなくできるそんな雰囲気を園に根付かせてくれたように感じます。そんなまつくりさんたちの旅立ちの日、在園児への「あとは頼むぜ!」というバトン渡しの「儀式」のハレの舞台を、私たちスタッフ、在園(うめもも、さくら)でしっかり間近で見届けて、新しい世界へと送り出したい、と思います。

このような個性たっぷりの愉快な子どもたちを託してくださったまつくりのお家の方々、本当に有難うございました。子どもたちと同じくお家の方々の繋がり、協働する姿、表現力にも驚きと感謝でいっぱいです。卒園しても木の花は皆さんの二番目の「マイホーム」であり続けたい、と願っています。いつでも「里帰り」をお待ちしております。
あゆどん(記)
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