教育課程
木の花暮らしでの育ちの道すじ
2024年度版
明治38年(1905年)、金沢の街中の武家屋敷に生まれた木の花幼稚園は、昭和の高度成長期には園児数300人を超える時代もあれば、少子化と街中のドーナツ化で30名を切り閉園の危機を迎えた時代も・・・。現在は100名ちょっと園児で子どもから子どもへと遊びの文化を伝えて今に至っています。
子ども時代を子どもらしく、その子らしく生きる
背景 子ども時代はどこへ?
子どもらしい育ちの環境は急速に消えつつあります。情報化と共に子育て環境もデジタル化、スピード化、省力化?
ゆとりのある時間、冒険でき遊び込める空間(環境)、異年齢の多様な人との出会い、拠り所としての文化や風土・・・は子どもの回りからどんどん失われています。
だからこそ、今の家庭や地域で出来ない生活、遊びを幼稚園が引き受けて、「子ども時代を一人一人子どもらしく生きる、その子らしく生活する」場を意図的に創ることが、より一層重要なことと考えます。
理念
子ども時代を子どもらしく、その子らしく生きる!
育ちのねらいの3つのポイント
(1)主体的に考える「知性」を育む
自ら考えることをとことん根気よく楽しめる子ども
(2)多様性を認め合う対話的な「徳性」を培う
ひとの違いを認め、尊重し、つながることを楽しめる子ども
(3)いかなる環境にも順応、適応する深い「品性」ある心身を養う
たくましさとしなやかな心と身体の自然体を楽しめる子ども
第1部|未満児の世界
安心・安定を土台に一人一人の世界をしっかり築く
ぐみ(1、2歳児)の時代
未満児時代はゆっくり育って、豊かな可能性を拡げる。
未満児はモノの見え方や音の聞こえ方など、五感の感覚をはじめ、身体諸機能、そして心の発達など幼児期とは発達の特性が異なる年齢です。落ち着いた空間環境を用意し、初めて出会う保育者との信頼関係のもと、一人一人の世界を大事に過ごし、そして少しづつその世界を拡げながら、新たな環境でも安心・安定する「自分」を見つけて、幼児期の世界(集団教育)へと巣立っていきます。
(1)園生活で自らの力で安心、安定感を獲得すること。
(2)その子らしい世界の多様性、可能性を拡げること(それぞれの個性ある世界の表出、自己発揮)
(3)生活の中での多様な自信をつけること(身辺自立及び行動する自信、他者とのコミュニケーションを楽しむ自信、環境を切り抜く、変えられる自信)
3つの方向目標とステップ
(1)新しい環境への適応
~自らの心身の安心・安定を感じる、広げる、掴む。
(2)一人一人の世界の没頭
~自分の世界を見つける、やってみる、没頭する。
(3)「遊びの世界」への巣立
~周囲の友達との「一緒」を味わう、楽しむ、つながっていく。
実現のための生活要素
第2部|幼児期の世界
子どもから子どもへ~遊びの文化が学びの土台
幼児期の時代
多様性と連続性のある日常の生活と「非日常」を織り込んだ保育
大人からだけでは学べない、いや子どもから学ぶ(真似ぶ)からこそ身につくものがある幼児期の世界。そんな子どもたちが主人公としての木の花暮らしのキーワードは多様性と連続性。子どもが主体的、自発的に関わる多様で連続性のある、流れのある日常に、ドキドキするような「非日常」的な出来事を織り込む生活が木の花暮らしの「幼児期の世界」の骨格です。
その育ち(学び)を支える木の花くらしの4つの構成要素
空間・モノ
子どもの生活圏
安心感と居心地の良さ、温もりのある生活環境を母胎により創造的により冒険的に自らの生活を切り拓く拠点となる空間とモノです。
◇園舎(本館):創造と想像の場
◇未満児棟(ぐみぐみハウス):安心と憩いの場
◇園庭:自然と冒険の舞台
◇地域:郷土の自然、社会と関わる生活
時 間
子どもの「とき」を刻む
年長から未満児へと年齢が下がるにつれてゆったりとした時間感覚を大事にしています。
◇一日の流れ:メリハリのある生活時間
(繰り返しの安定感のある流れ)
◇一年の流れ:季節感を感じる生活の暦
(非日常のお祭り)
ひ と
子ども時代の「出会い」
幼児期の学びは真似ぶが基本。ひとをモデルに多様な学びを得る出会いの場を多く作ります。
◇子どもと子どもとの多様な出会い
・自由遊び・クラス、学年集団・縦割り・グループ活動・統合保育・交流等
◇子どもと大人(あるいは大人同士)との出会い
・非日常の場(行事等)、保護者会、おやじの会活動、保護者参画(ボランティア等)、地域の施設、人々・保育者(男女混合多芸多才?)
文化・風土
暮らしの文化
武家屋敷に始まった保育文化があります。武家といっても生活臭のある労働も含めた江戸期の武家像が土台。小麦粉で練る糊を貝殻にのせて用意しての手技製作、菜園で取れた野菜を使った料理等、面倒さを厭わない、手間をかける、本物を大事にする、そういう文化が今も綿々と息づいています。