2025年度 保護者会総会によせて
- 木の花幼稚園
- 6月16日
- 読了時間: 8分
おお~きな のっぽの古時計♪ このは~なの とけい~♪
けったいな形態の木の花幼稚園・・・バトンを繋いで120年!
木の花はお陰様で120歳になりました。誕生日に大型積み木の寄贈も頂き、本当に感謝,
感謝です。

現存する日本最古の幼稚園は、お茶の水大学付属幼稚園で創立は明治9年(1876年)。木の花は明治38年の創立になります。県内では、金沢大学付属幼稚園、ミッションである北陸学院大付属の第一幼稚園に次いで3番目に古い幼稚園になります。この二つの園は後年共に移転してしまいましたが、木の花は開園当初から長町の地に留まり続けて、今に至っております。こうした大学などの付属幼稚園でもなく、キリスト教や仏教などの宗教園でもなく、創設者(オーナー)の世襲で続いている園でもないこと、長寛子さんが当時の知識人女性たちと共に立ち上げ、前田家の支援も受けつつ、卒園生等の関係者が法人運営(昭和初期は財団法人、戦後に学校法人へ)を引き継ぎ(ほぼ無償で)、地域や家庭が支える…このような園は金沢市内はもとより、県内にもなく全国的にも相当珍しい園だと思われます。
1.15ショック・・・幼児教育施設の危機
厚労省の人口動態統計2024年の発表が先日ありました。女性の合計特殊出生率が1.15の過去最低を更新(東京は昨年発表から1を切っています)。年間出生数は70万人を切りました。(68万6千人。国立社会保障・人口問題研究所が2023年に公表した将来推計では、68万人台に達するのは2039年と予測していた、とか。国の想定より15年ほど早いペースで少子化が加速度的に進んでいます。)減り続ける子どもの数、真っ先に影響を受けるのが幼児教育・保育施設です。つい数年前は待機児童問題!と言われていたのが、ウソみたいな話です。県内でも園児募集を停止した園もあります。寂しい限りです・・・。

危機に際して母たちが立つ・・・保護者会の源流、ここにあり!
木の花も実は閉園の危機がありました。街中人口の減少、いわゆるドーナツ化で昭和の後半、昭和50年代から60年代です。園児数減少で閉園の危機が叫ばれた頃(学校法人の理事会で閉園について議論)、制服やバッチを用意したり、園も色々努力は試みていたのですが、園児数は減り続け、30名を切りました。その時に立ち上がったのが母たちです。

「バザーをして稼いで遊具を買おう・・・」と母たちがバザーを始めたり、毎日がお弁当であった当時、理事長と直接交渉して外注搬入の給食導入のきっかけを作ったり、さらに「わたしたちも作るから・・・」と保護者会クッキングを始めたり、お芋畑を園庭に作ったり、地域でみつけて芋ほり遠足が始まったり、当時の園長先生がお茶の師範なので母たちの依頼で年長児のお茶が始まったり、私ら手伝うからとお泊り保育を始めたり、夕涼み会、全員でする誕生会やクリスマス会など今に続く行事や生活の大半がこの時期に保護者たちの提案と対話、協力の元に生まれています。
母たちは様々な想いを園にぶつけ、自ら手を貸して保育現場に「活」をいれてくれました(喝!か…笑 当時の理事長に様々な直接談判したのも木の花の歴史上初めてのことだったそうです)。
どうでしょう、すごくないですか? 閉園の危機に保護者発信で始まっているものを私たちは引き継いでいます。

保護者会が消えてゆく・・・幼児教育の現場で進んでいること
子どもから子どもへと遊びの文化を繋いできたように、閉園という危機の際に親たちの主体的な発想と行動力で、閉園を乗り越え、保育の枠組み、生活の在り方を拡げ、「大人の参画」という園の保育文化を再生、時代に見合うようブラッシュアップしてきました。明治以来の母の会から保護者会に名前を変えて、今日まで創造的に発展して保護者会は引き継がれています。
このような自主自立的な保護者会の在りようも今日の幼児教育・保育施設ではとても珍しくなりました(保護者会がない園、あっても形式的な園がどんどん増えています)。小学校教育以降のような教科学習と違い体験学習の幼児教育の豊かさのポイントの一つはその周辺の大人の在りようです。子どもたち一人一人の育ちを我が事のように喜び合える、たくさんの大人の手が子どもの背中を支える、親同士の関係性の豊かさが、子どもたちの育ちの安心・安定の土台になり、子どもたちがやってみようと飛躍する背中をそっと押し出す、子どもの可能性の「裾野」を拡げるチャンスを生み出していることは間違いありません。100年以上同じ土地で幼稚園を続けてきた原動力は関係者や卒園生、そして家庭の方々の想いが基盤にあります。
子ども受難の現代・・・便利さの陰で進行するニッポンの危機的状況
現代はITによる情報通信技術は世界を繋ぎ、AIによるチャットGPTなど答えがすぐ出る、便利な時代かもしれません。でもそれは本当に知性を磨く、人々の幸せを生み出すものなのでしょうか? フェイクに炎上、ネットいじめなど膨大な情報洪水の中で、命すら自ら落とす子どももいます。ユニセフの2024年のレポートでは、日本の子どもは身体的健康は1位で、スキル(学力など)は12位、一方で精神的幸福度は32位(OECDとEU加盟国36か国中)。こうした心の満足度の低さを象徴するのが、子どもの自殺の低年齢化です。
コロナ禍の3年間で小中高校の自殺者数は増加、学童の自殺者数は過去最高とか。去年(2024年)1年間に自殺した人は全体で2万268人と過去最少の水準となった一方で、児童・生徒は527人にのぼり、これまでで最も多くなりました。10歳~15歳の死因の1位が自殺です(以前は事故死でした)。自らの未来に希望を描けない子どもたちの増加は、今の日本社会の在りように大きな警鐘を鳴らしている、と感じます。他にもいじめ件数、不登校児童数、虐待通報件数、引きこもり人口も右肩上がり・・・。
教員志望の減少と同時に保育士、幼稚園教諭志望の学生がどんどん減って人手不足と相まって保育の質が低下していく懸念が現実にあちこちで表出しています(通園バスでの園児置き去りなどの「不適切保育」等)。
子どもの安心・安全をどう担保して保育を行っていくのか?そうした事故・事件への対応がさらに機器による「安全管理」とチェックリスト…という方向性が強まり、子どもの生活をさらに窮屈にする悪循環。社会のしわ寄せの矛盾を子どもたちが背負わされているかの如くです。

多様な子どもたちが育つ土壌・・・「水やり」は周りの大人たちで
そんな時代ですが、木の花っ子は先人の母たちから育てられたスタッフたちが引き継ぎつつ、皆さんに支えられて今や化石のような子どもらしい文化を残してここで息づいています。昨年度からは0歳の受け入れも始め、0歳から6歳までの子らが混ざる生活。さらに預かり保育時間帯の小学生アワーシップさんの存在。0歳から8歳までの子どもたちが混ざるなんとも豊かな生活となっています。(ちなみに満3歳を迎える前の2歳児はずっと昔から園に存在していました。きょうだいや地域の諸事情で預かっていたそうです。一方、昔は6歳児も在園していました。就学猶予で学校やるにはまだ早いしもう1年預かってもらえる?という感じで、インクルーシブな生活も昭和の初めの時期の保育日誌にも伺えます。)

一人一人の子どもがその子らしく育っていく園生活、個性あふれる発想、それぞれの感性が響き合い、一人一人に出番が子どもにも大人にもある木の花暮らし。ここで育つ子どもたちが、一人一人が不透明な未来の新しい時代を切り拓き、寛容性のある希望の持てる平和で持続可能な社会を築く担い手になることを信じています。そんな子どもたちを育てる両輪がスタッフたちの教育・保育の営み、そして保護者会、おやじの会の支えです。様々な保護者の方が参画できる場であり続けてほしいと願い、また多様な子どもたちが共に育つ環境を周りから見守り、色々な大人たちの「手」で一人一人の子どもたちの「背中」を支え、時には挑戦しようとするその「背中」をそっと押してあげられる、一人ではなく、みんなでする子育て、共に育てる共育の場を、より今の時代に見合うように創っていければ、と願っています。

120周年をきっかけに・・・ご一緒に如何?
今年は120歳という節目の年です。もうお伝えしましたが、お帰りの歌を作り直し、過去の残された協同制作の作品展示会、今日はさらに昔の遊具、恩物や写真なども飾っております。総会終了後は開場しますので、ぜひ手に取って触ってもらえれば、と思っています。他にも青年の部の拡大同窓会も夏に企画しています。この中にも卒園生混ざってますもんねえ。昨日も見学に来たお母さんがわしら(高年齢職員・‥失礼!)のよく知る卒園生でした。そして冬場には木の花あるある事典という、ちょっと漫画チックな記念誌も発行予定です。もう一つおまけに120周年という節目に環境整備を掲げています。園庭ワクプロも拡大版も開催。よかったらどうですか?庭の環境整備にひと汗かきませんか?
120ねん 休まずに チクタクチクタク こどもたちと いっしょに チクタクチクタク♪
いまも なお あゆみつづける きのはなの とけい~♪
130歳、150歳とこれからも末長く、時計の針が続きますよう、木の花の保育、園運営にこれからもご理解、ご協力をよろしくお願い致します。本日は本当に有難うございました。
あゆどん(談・加筆修正)
(保護者会総会での顧問挨拶をお便り仕様に加筆修正しました。アイスブレイク同様長くてごめんなさ~い。)




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